会計

【経営者の落とし穴】役員報酬は使い切るな!不測の事態を乗り切る堅実な資金戦略

「会社から支給された役員報酬(お給料)、社長ご自身で全額使っていませんか?」

創業期や事業の拡大期においては、売上の変動や不測の事態に備えて、いつでも会社に資金を投入できる体制を整えておくことが非常に重要です。

社長が個人のお金を貯めておき、必要に応じて会社へ貸し付ける仕組みを作っておくことで、会社の資金繰りを劇的に安定させることができます。ただし、これらを実務で正しく運用するためには、しっかりとした書類の準備が必要不可欠です。

この記事では、社長の個人資金を会社へ貸し付ける(役員借入金)メリットや具体的な活用法に加え、「個人で貯めるか、法人に内部留保として残すか」の比較シミュレーションの重要性について分かりやすく解説します。

会社と社長個人の資産をしっかり守り、強い財務体質を作るためのヒントとしてぜひ役立ててください。

1. なぜ社長は給料を使わずに貯めておくべきなのか?

1-1 予測不能な危機に備える!堅実経営が求められる理由

これまでのビジネスの歴史を振り返っても、予期せぬ社会の激変や危機は常に発生してきました。

  • リーマンショック(2008年):世界的な金融危機による深刻な景気後退
  • 大規模な自然災害:東日本大震災をはじめとする未曾有の災害や供給網の断絶
  • 鳥インフルエンザや感染症の発生:畜産業や外食産業などを直接揺るがす流行病
  • コロナ禍(2020年〜):世界規模のパンデミックによる人流抑制と市場構造の変化
  • AIの急激な進化:従来のビジネスモデルや市場の需要を根底から塗り替える技術革新

このように、時代ごとにビジネスのトレンドや社会情勢は大きく変化しており、どれほど順調な会社であっても「明日何が起こるか分からない」のが現実です。不測の事態が起きた際にも事業を途絶えさせず、雇用や取引先を守り抜くためには、常に手元キャッシュを厚くしておく「堅実な経営」が最も確実な防衛策となります。

1-2 生活レベルを上げず地味に堅実に会社を育てる

事業が順調に行き始めると、役員報酬が増えて社長個人の生活レベルを上げてしまいがちです。しかし、プライベートの支出を増やしてしまうと、いざという時に会社を守るための資金が残りません。

経営者として本当の成果を出すためには、生活を豪華にするのではなく、最初は地味であっても堅実にお金を留保しておく姿勢が大切です。個人の支出を抑えて手元資金を蓄え、まずは会社を成長させることが、結果として将来の大きな安心や理想の未来につながります。

2. 社長から会社へお金を貸す「役員借入金」の仕組みとメリット

2-1 役員借入金の手続きと契約書の準備

社長個人のお金を会社に貸し付ける処理を、会計上「役員借入金」と呼びます。

役員借入金は、銀行融資のような審査が必要なく、迅速に会社へ資金を補充できる点が大きな強みです。ただし、税務上のトラブルを防ぐためには「金銭消費貸付契約書」などの書類をあらかじめしっかりと準備しておく必要があります。口座のやり取りだけでなく契約書等の書類を整えておくことが、税務署に対しても正しく証明するための重要なステップとなります。

2-2 銀行からの評価を高め資金繰りを安定させる

社長個人の口座に資金がしっかり貯まっており、会社へ貸し出せる体制があるという事実は、金融機関(銀行)からの信用向上にもつながります。

「万が一の際にも社長個人から資金を投入できる余力がある会社だ」と評価されれば、追加融資の審査などでもプラスに働くことがあります。会社名義の口座だけでなく、社長個人の資産も含めたグループ全体の体力を強化しておくことが、結果として会社の生存率を高めることになります。

ただし、銀行によっては、借入金という負債だと判断され、マイナスに傾くこともありますので、検討が必要です。

3. 「個人で貯める」vs「法人で残す(内部留保)」どちらが得か?

3-1 法人税率と個人所得税・社会保険料のシミュレーション比較

手元に資金を残す方法としては、①「高めの役員報酬を取る方法」と、②「役員報酬を低めに抑えて内部留保として残す方法」の2パターンが存在します。

ここで重要になるのが、「税金と社会保険料のトータル負担額」の比較です。

  • 個人で貯める場合(役員報酬を高めにする)
    社長個人の所得税・住民税は最高で約55%まで跳ね上がるほか、社会保険料(健康保険・厚生年金)の負担も大きくなります。高額な役員報酬を設定すると、個人の手元に残る現金比率が下がるケースがあります。
  • 法人で残す場合(内部留保を増やす)
    法人税等の実効税率は中小企業であれば約20%〜35%程度に収まるため、場合によっては個人で高い税金を払うよりも、会社に利益を残した方がトータルでの税負担を小さく抑えられることがあります。

どちらが良いかというのは、許認可、会社の利益状況、社長の役員報酬額・ビジネス経験・性格によって全く異なります。だからこそ、感覚で決めるのではなく、事前に税理士へ依頼して綿密な計算シミュレーションを行うことが不可欠です。

3-2 不適切な役員報酬の設定リスクと専門家への相談

そもそも、社長自身が蓄えを作れるだけの役員報酬を設定していなければ「個人で貯める」ことすらできません。

しかし、根拠なく急激に役員報酬を増やしたり、不適切な金額に設定してしまったりすると、税務上認められず否認されてしまうリスクがあります。法人の税負担と個人の税・社会保険料負担のベストなバランスを見極め、適正な役員報酬額を決定するためには、事前に税理士などの専門家へ相談して明確な指針を得ることが何よりの近道です。

まとめとお問い合わせ

税理士 長島彩
税理士 長島彩

今回は、社長が役員報酬を使わずに貯めておき、いつでも会社へ貸し出せるようにしておく重要性や「役員借入金」、そして「法人での内部留保」について解説しました。

個人の生活レベルを上げずに地味でも堅実に資金を蓄え、必要なときに会社へ資金を投入する姿勢は、どのような社会変化が訪れても事業を確実に成長させる大きな糧となります。ただし、個人と法人のどちらに資金を残すのが有利かというシミュレーションや、契約書類の整備、役員報酬の適正設定など、専門的なチェックも欠かせません。

当事務所では、暖かく丁寧な対応を心がけており、どんなに小さな疑問や不安でも気軽に話せる税理士が親身になってサポートいたします。「わが社は個人と法人、どちらにお金を残すべきかシミュレーションしてほしい」「役員報酬の最適な決め方について相談したい」など、どんなことでも遠慮なさらず、どうぞお気軽にお声がけください。

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