垂直的統合と水平的統合とは?そして例は?(税理士がしっかり解説)

「M&Aって気になる。垂直的統合と水平的統合って何だろう?」、「垂直的統合と水平的統合の違いは?」、「垂直的統合と水平的統合はそれぞれどんな例があるのだろう?」、

こういった場合どうしたらいいのでしょうか?

今回の記事では、垂直的統合と水平的統合とは?そして例について、税理士がしっかり解説します。

1.垂直的統合と水平的統合とは?

①垂直的統合とは何か?

垂直的統合とは、1つの企業が川上から川下までを押さえるというM&A方式です。「川上」は原材料を製造している企業であり、「川中」がメインの製品を製造している企業であり、「川下」がメインの製品の販売している事業とすると、「川中」を起点として、「川上」か「川下」をM&Aするのが垂直的統合になります。

A.垂直的統合のメリット

仕入コストをコントロールできることがメリットになります。自社で仕入先を垂直的統合してしまえば、仕入先も自社になるので、仕入先に突然、値上げをされるというリスクをコントロールできます。

B。垂直的統合のデメリット

原材料の製造は元々自社の専門分野ではないため、不得意分野に乗り出さなくてはいけない可能性があります。垂直的統合のデメリットは、不得意分野リスクになります。

②水平的統合とは何か?

水平的統合とは、水平方向に拡大する方法を言います。新たな市場の拡大、顧客の拡大を目指します。

A.水平的統合のメリット

水平的統合のメリットは、市場占有率が高くなるため、事業に優位性がでることです。また、

もう一つの水平的統合のメリットは、市場占有率を高めることに設備投資に積極的になれることです。

さらなる水平的統合のメリットは、得意分野に絞れるため、効率の良い経営が行えるようになることです。(垂直的統合であると、上記の通り、不得意分野に乗り出すことになります。)

B.水平的統合のデメリットは?

水平的統合のデメリットは、特にありません。

③垂直的統合と水平的統合の違いは何か?

垂直的統合と水平的統合の主な違いは、垂直的統合が異業種をM&Aするのに対して、水平的統合であると、同業種をM&Aするということでしょう。

垂直的統合は、異業種をM&Aすることになるので、原材料価格をコントロールできるというメリットがありますが、その反面、不得意分野リスクが生じます。

水平的統合は、同業種をM&Aすることになるので、得意分野を拡大できるというメリットがあり、デメリットは特に見当たりません。

2021年のM&Aの事例を見ると、9割近くが水平的統合になっています。多くの企業がデメリットなしで、メリットのある水平的統合を好むのでしょう。

2.垂直的統合と水平的統合の例は?

①垂直的統合の例

A.ライフ・コーポレーションと日輪の垂直的統合

垂直的統合の例としては、ライフ・コーポレーションを日輪に売却したという事例があります。日輪は、資本金1億円で、大企業に該当します。

ライフ・コーポレーションは、警備の会社でした。これを人材派遣サービスの日輪に売却した訳です。つまり、今までは、

「風上:日輪」→「川中:ライフ・コーポレーション」→「川下:警備を必要とする一般企業」でした。

日輪から人を仕入し、ライフ・コーポレーションが警備を必要とする一般企業にその警備サービスを販売していたのです。

日輪は、今まで、ライフ・コーポレーションに人を売上していましたが、この垂直的統合により、一般企業への販売までを押さえられるようになりました。

なお、ライフ・コーポレーションを売却した理由としては、後継者不在による引退でした。

M&Aの手法としては、株式譲渡でした。

B.ニトリと島忠の垂直的統合

垂直的統合の例として、ニトリと島忠を挙げておきます。ニトリは皆さまご存じのとおり、家具の製造から販売までを行う会社です。島忠は、家具も扱っているホームセンターです。ニトリは、「衣・食・住すべてを押さえたい」という意向です。このM&Aは、垂直的統合でありながら、水平的統合でもあるという例になります。

島忠は、DCMホーマックとニトリで取り合いになった結果、ニトリが勝ちました。もしも、DCMホーマックによるM&Aであれば、完全な水平的統合でした。

2021年1月にニトリは島忠をM&Aしました。

これによりニトリは、ホームセンター事業に着手することになります。

こうなると、理論通りであると、ニトリは、垂直的統合で、「川下」である販売先を押さえたことになりますね。理論通り、島忠ホームセンターは、「ニトリホームズ」に変わりました。

②水平的統合の例

A.アサヒビールの豪カールトン・ブリュワリーズ水平的統合

水平的統合の例として、アサヒグループホールディングスは、2020年にオーストラリアのビール最大手であるカールトンブリューワリーズをM&Aしたという事例があります。

買収額は、日本円で約1兆2,000億円となる巨額の水平的統合でした。

アサヒグループホールディングスが、この巨額の資金調達を可能にした方法としては、公募増資です。公募増資とは、新株発行をして投資家から資金を集めることを言いますね。

この水平的統合で、アサヒグループホールディングスは、オーストラリアのビール市場で50%を取得しました。

こうなると、理論通り、市場占有率が高まっていますよね。ここで、設備投資ですね。そして、ビールは当然アサヒビールの得意分野なので、効率の良い経営が行えるようになりますね。この効率の良い経営については、5年間で100億円のシナジー効果を見込んでいるそうです。

B.ココカラファインとマツモトキヨシの水平的統合

水平的統合の例としては、ココカラファインとマツモトキヨシの水平的統合があります。2021年10月に両者が水平的統合をし、マツキヨココカラ&カンパニーが誕生しました。この合併により、ドラッグストア業界の1位、2位が逆転しました。今までは、1位はウェルシアだったのですが、本水平的統合をもって、マツキヨココカラ&カンパニーが市場の1位となりました。

ココカラファインをマツキヨが買った形の水平的統合になっています。

水平的統合の具体的な手段は、株式交換になりました。

こうなると、理論通り、市場占有率が高まっていますよね。ここで、設備投資ですね。そして、ドラッグストア業界当然マツキヨの得意分野なので、効率の良い経営が行えるようになりますね。この効率の良い経営については、商品の共同開発や販促戦略のデジタル化で、営業利益200億円のシナジー効果を見込んでいます。

C.セブンアンドアイホールディングスの米スピードウェイの水平的統合

水平的統合の例として、日本のセブンアンドアイホールディングは、アメリカのスピードウェイというガソリンスタンド併設型コンビニ事業の買収があります。

スピードウェイはアメリカのコンビニ市場の3位を占めていました。1位は、セブンイレブン、2位は、アルメンテーションという会社になります。

2021年の6月にセブンアンドアイはスピードウェイの買収を実行しています。

スピードウェイをセブンアンドアイが買った形の水平的統合になっています。

水平的統合の具体的手段は、株式の取得です。日本円約2兆2,000億円で水平的統合をしました。

こうなると、理論通り、市場占有率が高まっていますよね。ここで、設備投資ですね。そして、コンビニ事業は、当然セブンアンドアイの得意分野なので、効率の良い経営が行えるようになりますね。この効率の良い経営により、前期の連結売上39%アップという好成績になりました。

3.垂直的統合と水平的統合について知ったあなたがすべきこと

さて、ここまで読んだあなたがすべきことは1つだけです。

・垂直的統合か水平的統合どちらが自社に合っているか検討する。

・M&A先を探す行動を始める。

ぜひやってみてください。