人的資本の情報開示のポイント5選ブラック企業は危険かも(税理士がしっかり解説します。)

「人的資本の情報開示って何?ポイントを押さえたい!」、「人的資本の情報開示って何を開示すればいいの?」、「人的資本の情報開示でブラック企業がわかる?」
こういった疑問に答えます。
もくじ
1.本記事の信頼性
本記事を書いている筆者は税理士事務所を経営する現役税理士です。
筆者は若い頃、ニューヨークで勤務していました。国際派税理士です。
人的資本の情報開示は、日本やEUでは、2022年内に着手し、2022年内にまとめるとのことです。税理士である筆者の個人的予測ですが、適用は、少なくても2023年以降になると思います。
これに対して、インドが世界に先駆けて、人的資本の情報開示を2022年度から始めます。
本記事では、税理士である筆者が得意な英語を生かして、すでに先行事例となっているインドを調査しつつ、人的資本の情報開示のポイント5選をしっかり解説します。
2.読者さんへのメッセージ
本記事は、「人的資本の情報開示って何?ポイントを押さえたい!」という方向けに税理士が解説する記事です。
本記事は3分で読み終わります。3分後にあなたは、「人的資本の情報開示というのが新しくできるんだよ。ポイントは5つあってね・・・。」とカッコよく切り出せるようになるでしょう。
それでは、早速見てみましょう。
3.人的資本の情報開示のポイント5選ブラック企業は危険かも(税理士がしっかり解説します。)
人的資本の情報開示ポイント①:世界各国の情報開示状況
これは、先ほど記事の冒頭にも書いてある通り、人的資本の情報開示は、日本やEUでは、2022年内に着手し、2022年内にまとめるとのことです。つまり、この記事の執筆時点2022年2月18日頃には、公には、まだ何もまだ発表されていない段階です。
アメリカはやはり世界において一番乗りで人的資本の情報開示に着手していました。
アメリカは、2020年の8月26日に101条を修正しました。そして、わずか2か月後の2020年の11月9日からこの修正条項は、効力を発揮しました。101条の項目の下に人的資本を情報開示するということになりました。
2番手はインドです。インドは、人的資本の情報開示を2022年度から始めます。
人的資本の情報開示ポイント②:何を開示するのか?
A.アメリカの人的資本の情報開示例

アメリカの人的資本の情報開示状況がどうなのでしょうか?そもそも今回の法律は、「原則主義」として定められました。つまり、人的資本が何かも定義されていない状態なのです。統一的なフォームがない状態で、始まりました。
このため、各企業は、それぞれ自由に人的資本の情報開示を行うこととなりました。
B.調査により判明した人的資本の情報開示例
アメリカでは、すでに2020年から人的資本の情報開示が行われています。SEC(米国証券取引委員会)ルールに従った100企業の調査を見てみましょう

さすが、アメリカだけあって、人的資本の情報開示については、ダイバーシティ、つまり、様々な人種や文化の受け入れといったところが1番多いですね。アメリカ人は向上心が高い人が多いので、アメリカ人の大好きな能力向上が2番に多くなっていますね。
B. Appleの人的資本の情報開示例

税理士である筆者がAppleのようなアメリカを代表する企業の人的資本の情報開示は、どういう風に記載されているのだろうか?と興味を持ち調べてました。
AppleのForm10-K(2021annual report)によると、人的資本の情報開示はA4の紙一枚分でした。
項目は、
職場環境の状況とポリシー、報酬とベネフィット、成長と能力開発、ダイバーシティ・多文化の受け入れ・オープンな職場環境・健康と安全でした。
つまり、前述したAndrew他の調査と似たような結果でした。
C.インドの大企業TATAの人的資本の情報開示例
TATAグループの2021年のAnnual Reportには、まだ人的資本の情報開示は行われていませんでした。
参考として、TATA Steelのホームページの人的資本のページからTATAがどういう風に考えているかを拾って見ました。TATAは、人的資本の情報開示より前に、先駆けて情報開示し、イニシアチブをとるそうです。
項目は、
健康と幸福、栄養価の高い食物の追及、健康と安全のための高い目標、家族と記念日
でした。
つまり、前述したAndrew他の調査とは全く異なる結果となりました。アメリカは、ダイバーシティ、向上心などにターゲットを当てているのに対して、インドはより食、幸福、家族などにターゲットを当てています。面白い結果です。
人的資本の情報開示ポイント③:どこに情報開示することになるのか?
アメリカの開示例によると、フォーム10-KつまりAnnual Report(年次報告書)のItem.1 ビジネスの4,5ページ目でした。
おそらく日本の有価証券報告書であると、第一部 企業の概況の5従業員の概況のあたりでしょうか。
ここの従業員の概況の部分に現在、何が書いてあるかというと、楽天を参考にしてみると、従業員数、平均年齢、平均勤続年数、年間平均給与、従事しているセグメントごとの人員などが記載されていました。
現行の情報だと、確かにダイバーシティ、能力向上など、より未来に向かった人的資本の情報開示については、書かれていませんね。
人的資本の情報開示ポイント④:情報開示する企業は大企業か中小企業か?
アメリカにおいて、人的資本の情報開示はまず、大企業から始まっています。
中小企業が開示をするとなると、決算書の事業概況書になるのでしょうか?中小企業の場合は、証券取引所に上場していないので、そこに決算書で情報開示は、何か意味があるのか疑問というところでしょう。税理士である筆者の個人的見解としては、むしろ、ホームページに自主的に人的資本の情報開示をした方が、採用や取引先の印象が良くなりそうです。
人的資本の情報開示ポイント⑤:日本で実際の情報開示はいつくらいからか?
日本で会計基準が改正された場合に、公表から、どのくらいで、実際に施行か?ということを調べてみました。即時に施行→2,3か月後→6か月後→2年後等さまざまでした。
インボイス制など、社会へのインパクトが大きいものは、段階的適用になっていて、完了まで5年位を要するなどというものもあります。
今回の人的資本の情報開示については、アメリカのような自由形式であれば、アメリカのように2か月後というのもあるのかもしれません。
しかしながら、日本で2022年内に決定し、2022年内に施行というのは、ありえるのでしょうか?もう少し準備期間が用意されるような気がします。
税理士である筆者の個人的予測では、2022年内に人的資本の情報開示の施行はないような気がします。
ちなみに、人的資本の情報開示は、統合報告書に近いよう(一部ように考えらえそう)ですが、こちらですら、まだ義務化していません。
ということで、2022年内に人的資本の情報開示の施行はないような気がします。
4.人的資本の情報開示でブラック企業がわかる?
人的資本の情報開示でブラック企業があぶりだされるかもしれない。これは税理士である筆者が個人的に感じたところです。
これは、人的資本の情報開示の項目として何を義務化するかによるでしょう。
将来的に項目として、「メンタルヘルスによる休職割合」とか、「労働時間」とか、「離職率」とか、「従業員の意識調査の結果」、「社内のパワハラ相談件数」など義務化して加えてみると、ブラック企業があぶりだされるかもしれません。
しかしながら、現在は、世界で一番最初に人的資本の情報開示に着手したアメリカでもソフト路線(ダイバーシティ、研修)などの開示にとどまっています。
この人的資本の情報開示が進むといずれかは、有価証券報告書の中で、ブラック企業情報も含まれることになるのでしょう。
ブラック企業はリスク要因と見なされるので、投資をためらう人が増えてくるでしょう。ホワイト企業へ投資が集まり、ホワイト企業はその資金を元にますます事業を拡大させるので、ますます成長するという戦略が描けます。
こうして、未来はよりよい方向に向かうのではないでしょうか?
5.人的資本の情報開示の参考文献
・GIBSON DUNNホームページ(2022)
・TATA Steelホームページ(2022)
・Kirti Aggarwal Research Article(2021)
・Veerma Puri Drishtiikon A Management Journal(2016)
・Andrew Gordon etc., Harvard Law School Forum(2021)